Copilot最新ニュース:2025年秋、何が変わった?
2025年は、Microsoft 365 Copilotが単なる“文章生成AI”から、仕事の流れ全体を支えてくれる存在へと、じわじわ進化している年です。
1. Officeアプリ内の「Agent Mode」「Office Agent」
2025年9月末の発表では、ExcelやWordで「Agent Mode」、Copilotチャット側には「Office Agent」という新機能が追加されました。
- Agent Mode(Excel・Word)
- 「この売上データをざっくり分析して、来期のポイントを整理して」といった指示をすると、
- データの読み込み
- 集計や分析
- グラフ化
- 「この売上データをざっくり分析して、来期のポイントを整理して」といった指示をすると、
…までを、対話しながら何度もやり直してくれる“AI付きエキスパート”のような位置づけです。
- Office Agent(Copilotチャット)
- 1つのプロンプトから、提案資料や議事メモなど「複数のOffice文書」をまとめてドラフトしてくれる“段取り担当”のような役割です。
AIに「一気通貫で段取りまでお願いできる」という意味で、「エージェント型AI」への一歩と見られています。
2. Outlook・Teamsなど、日常業務に直結するアップデート
日本語ブログでも、2025年9月分のCopilotアップデートがまとめられています。ポイントだけ抜き出すと、
- Copilotチャットが Word / Excel / PowerPoint / Outlook / OneNote から横スライドで呼び出せるように
- Outlookとの連携が強化され、
- チャット内で書いた文面をそのままメール下書きに送るボタン
- メール本文・添付ファイルまで読み取ったうえで要約・回答案を作る機能
- 共有メールボックス(代理で見るメール)にもCopilotが対応
- 長文文書に強い「ロングコンテキスト」モデルが入り、長い仕様書や提案書も一度に扱いやすくなった
さらに、Outlook側では、重複した1on1やプライベート予定を自動で組み替えるスケジュール再設定の機能も加わり、「予定がパンパンで頭が回らない」状態の軽減を狙っています。
3. 個人向けMicrosoft 365にもCopilotが広がる流れ
2025年初頭には、個人向けMicrosoft 365でも、Copilot付きプランが用意される動きが報じられました。WordやExcel、Outlookなどおなじみのアプリに、基本的なAIアシスタントがセットになる形です。
これにより、「会社では法人ライセンス、家では個人ライセンス」という二重構成で、仕事とプライベートの両方でCopilotに触れる人が増えそうです。
でも現場の声は「効率化しているはずなのに、忙しさは減らない」
AIニュースが賑やかな一方で、現場のビジネスパーソンからは次のようなモヤモヤが目立ちます。
- 「社内AIが入ったけど、正直あまり使えていない」
- 「ChatGPTやCopilotを触ってみても、プロンプトを直しているうちに時間が溶ける」
- 「議事録はすぐ出てくるのに、残業は減らないどころか“AI前提の追加タスク”が増えた」
海外の調査でも、AIを導入したものの、約4割の人が“AIの出力を直す時間”に悩まされているという指摘があります。
つまり、「AI的にはすごく進化している」のに、生活者目線では「楽になった実感」が追いついていないというギャップが確かに存在します。
実際にどれくらい効率化しているのか?数字で見るCopilot
「ニュースだけだと実感が湧かない…」という方のために、公開されている事例から、“どれくらい時間が浮いたのか”だけをピックアップします。
1. カード会社の事例:1人あたり月約6時間の削減
ある国内の金融企業では、Copilot導入後の調査で、
- 会議の議事録作成
- 会議内容の理解・キャッチアップ
- 社内情報の検索
- メール要約
といった“情報整理系の業務”を中心に、1人あたり月約6時間の業務時間削減という結果が出ています。
特に効果が大きかったのは、
- 議事録づくり(1人あたり月1時間以上の削減)
- 社内情報の検索(「どこに何があるか分からない」問題の解消)
など、「考える前の下準備」にあたる作業でした。
2. 就職支援企業の事例:3か月で約5,000時間削減
別の企業では、全社的なトレーニングとセットでCopilotを導入したところ、
- 3か月間で 合計5,004時間 の業務時間削減
- 金額換算で約1,300万円のコスト削減
- アクティブユーザー率100%(社員全員が何らかの形で利用)
というかなり大きなインパクトが出たと報告されています。
ここでも中心になっているのは、
- Teams会議の要約 → 商談メモの自動作成
- Outlookでのメール下書き・要約
- 社内ナレッジの検索・整理
といった、“コア業務の前後を固める作業”の時短です。
なぜ「効率化しているのに忙しさが減らない」のか?
AI活用のコラムや現場の声を整理すると、忙しさが減らない理由は大きく4つに分解できます。
1. ゴールが「時短」ではなく「アウトプット増」になっている
- 「AIで効率化できたから、今までより多くの資料を作ろう」
- 「議事録はすぐ出るから、会議の数を増やしても大丈夫」
…と、浮いた時間にさらにタスクを詰め込んでしまうケースです。
結果、成果(アウトカム)ではなく「AI+人間でアウトプットだけ増えた」状態に。
2. AI前提の“新しい雑務”が増えている
- AI用のプロンプトを考える
- 出力結果をチェックして整形する
- どのツールで何をさせるかを毎回考える
といった、「AIのための仕事」が静かに増えています。
作業自体は軽くても積み重なると、「なんだか前より忙しい」感覚につながりがちです。
3. 社内ルールやUXが整っておらず、使うたびに悩む
生成AI導入が進んでいない、という分析では、「使いやすさ」と「ルールのあいまいさ」がボトルネックとして挙げられています。
- どの業務で使っていいのか明文化されていない
- プロンプト例・テンプレが共有されていない
- 社内AIのUIが複雑で、使うまでのステップが長い
結果、「毎回ゼロから試行錯誤」になり、心理的な負担が増えます。
4. 「どのAIを使うか」で迷う時間が増えている
最近は、
- ChatGPT
- Microsoft 365 Copilot
- 各社の専用チャットボット
など選択肢が増え、「どれに聞けば早いのか分からない」という声も出ています。
Copilotを「仕事効率化の味方」にする3つの鉄則
ここからは、「AI関連ニュースは追っているけれど、実生活ではまだモヤモヤしている」方向けに、現実的なCopilot活用の設計図を書いていきます。
鉄則①:対象を「メール」と「会議」に絞って始める
いきなり全部の業務にCopilotを広げようとすると、
- どのアプリから手をつけるか
- 何をどこまでAIに任せるか
で疲れてしまいがちです。
最初の1〜2か月は、「メール」と「会議」だけに絞るのがおすすめです。
メール(Outlook)
- 返信が重いメール → 「要約+返信案を作って」と指示
- 英文メール → 「ていねいなビジネス英語に書き直して」
- 長いスレッド → 「このメールの要点と決定事項を3行で整理して」
Copilotチャットの画面から直接Outlookの下書きに送れるようになったので、
「チャットで叩き台を作る → メールに送る → 最後だけ自分で調整」という流れが組みやすくなりました。
会議(Teams)
- 会議招集時:
- 「この議題で30分会議のアジェンダを5つ作って」
- 会議後:
- 「この会議の要点・決定・宿題を、それぞれ箇条書きで」
- 「自分のタスクだけ抜き出して」
会議中のメモを手放せると、その場で発言に集中できるので、精神的な疲れがかなり減るという声が多く出ています。
鉄則②:プロンプトを“テンプレ化”して、1クリックで呼び出す
「うまく聞けないから、結局自分でやった方が早い…」という悩みの多くは、毎回“聞き方”から考えていることが原因です。
そこで、よく使うプロンプトは テンプレに固定してしまいます。
例:メール用テンプレ
- 「以下の内容をもとに、ビジネスメールの文章案を3パターン作成してください。
条件:①日本語/②敬語/③結論→背景→お願いの順番/④200文字以内」
例:議事録用テンプレ
- 「この会議メモから、①要点/②決定事項/③各メンバーのタスク/④次回までの宿題
を箇条書きで整理してください。」
こうしたテンプレを、
- Copilotの「プロンプト保存機能」
- Teamsや社内Wikiの「定型文」
などに登録しておくと、一度作った“質問の型”を何度でも使い回せるようになります。
【あわせて読みたい:もう悩まないプロンプト設計|Copilotで使える“仕事効率化テンプレ”の作り方とチームでの共有ルール】
鉄則③:「どれくらい時間が浮いたか」をざっくり可視化する
「効率化の実感がない」理由の1つは、成果が見えづらいことです。
例えば、1か月だけ次のようにざっくりメモしておきます。
- Copilotに任せた
- メール作成の回数 × 「1通あたりどれくらい短縮できたか」
- 議事録作成の回数 × 「1回あたりどれくらい短縮できたか」
- 例:
- メール:20通 × 8分短縮 ≒ 約160分
- 議事録:5本 × 20分短縮 ≒ 約100分
→ 合計 260分(約4時間ちょっと)
これだけでも、「AIのおかげで今月は半日ぶんの作業が浮いた」という感覚が持てるようになり、モチベーションにもつながります。
Copilot活用で“生活導線”はどう変わる?
ここからは、生活改善の視点で、1日の動きがどう変わるかをイメージしてみます。
朝:メール地獄からの解放
Before
- 出社後すぐ、未読メールの山と格闘
- 重要なのかどうか分からないスレッドを1通ずつ開いて確認
- 返信文を考えているだけで午前が終わる日も
After(Copilotあり)
- まずCopilotに「昨日〜今朝の重要メールだけ一覧にして」と依頼
- 長文スレッドは、要点と決定事項だけをまとめてもらう
- 定型的な返信は下書きを自動生成し、最後の確認だけ自分で行う
→ 午前中に“考える仕事”に入れる時間が増え、心理的にも余裕が出る
昼〜午後:会議後の“謎のもやもや時間”が消える
Before
- 会議が終わっても、議事録を書くのが面倒で放置
- 「あれ、結局何が決まったんだっけ?」とスレッドを掘り返す
- 同じような説明を何度も別メンバーにする羽目になる
After
- 会議終了と同時に、Copilotに要約・アクションアイテムを出してもらう
- 要約リンクをそのままチャットに共有
- 自分は「どのタスクを優先するか」の判断に集中
→ 会議の“後処理”に使っていた30分〜1時間が、そのまま企画や検討の時間に変わる
夜:家に持ち帰る仕事が減る“軽い安心感”
- メールや議事録の下書きが日中のうちに片付きやすくなり、
- 「帰ってから資料のたたき台だけ作らないと…」というパターンが減る
完全に残業ゼロになるとは言えませんが、「毎日1〜2時間の残業は当たり前」という状態から、“今日は上がれそうだな”と思える日が増えるだけでも、生活の質はかなり変わります。
注意点・限界:Copilotに任せすぎないための小さな工夫
1. 「重要な判断」は必ず自分で行う
Copilotは、
- 情報収集
- 文章の叩き台
- 選択肢の整理
には強いですが、
- どの案に決めるか
- 誰にどう説明するか
といった最終判断は人間の役割のままです。
重要なメール送信・契約・価格交渉などは、AIのアウトプットを“考える材料”として使うくらいの距離感が安心です。
2. 情報保護・社内ルールの確認は必須
- 機密情報
- 個人情報
- 社外秘資料
などを扱うときは、自社のポリシーや、Copilotのデータ取り扱い仕様を確認したうえで、「どこまで入力してよいか」を決めておく必要があります。
3. 「AI活用=人減らし」という視点に飲み込まれすぎない
ニュースでは、AI投資と人員削減がセットで語られることもありますが、
実際の現場では、
- 単純作業を減らして
- 企画・提案・コミュニケーションに時間を回す
という仕事の中身のシフトとして活用している例も多く報告されています。
Copilotはどんな人に向いている?向いていない?
向いている人
- 毎日メール・会議が多く、「1日が会議とメールで終わる」人
- Word・Excel・PowerPoint・Outlook・Teamsを日常的に使っている人
- 「プロンプトを考えるのが面倒だからこそ、テンプレを決めてしまえば回せるタイプ」の人
ちょっと工夫が必要な人
- そもそもMicrosoft 365をあまり使っていない人
- 仕事の大半が現場作業・対面コミュニケーションで、PC業務が少ない人
- 「AIの提案を見ても、どれが良いのか判断できない」と感じやすい初心者
この場合は、いきなり全社導入やフル活用を目指すより、
- チームで「まずはメールだけ」など対象業務を限定
- 成果が出たら、少しずつ範囲を広げる
といった段階的な導線の方が、ストレスも少なくおすすめです。
「最近よく聞く悩み」へのQ&A
Q1. 「社内AIが使いづらくて、結局個人で契約したAIばかり使っている」
- まずは、「社内AIで何ができるのか」をざっくり棚卸し
- 個人契約のAIと役割分担を決める(例:
- 社内データを使う作業 → 社内Copilot
- 学習・アイデア出し → 個人のChatGPT など)
- 社内AIが明らかに現場ニーズと合っていない場合は、
- 「どの業務で困っているのか」
- 「どんな使い勝手なら日常的に使えるか」
を簡単にメモにして、担当部署にフィードバックしてみるのも一案です。
Q2. 「ChatGPTだけで良くない?Copilotも必要?」
どちらか一方だけに決める必要はありませんが、ざっくり分けると:
- Copilot:
- メール・会議・社内ドキュメントなど、「仕事そのものの現場」での効率化向き
- ChatGPTなどの汎用チャットAI:
- アイデア出し、文章ブラッシュアップ、学習用の質問など、「仕事の外側」やプライベートも含めた利用に向きやすい
“どちらかに依存する”よりも、「情報が社内にあるかどうか」で使い分ける発想が扱いやすいです。
Q3. 「ライセンス費用の“元が取れているか”がよく分からない」
厳密な投資対効果の計算は専門的な話になるので避けますが、個人レベルでは、次のようなざっくりチェックが参考になります。
- 1か月に
- Copilotを使ったメール・議事録・資料作成の回数
- 1回あたり「手でやった場合にかかっていたであろう時間」
を掛け合わせて、「浮いた時間の合計」が月数時間以上あるかどうか
もし「ほとんど使っていない」「使っているが時短につながっていない」のであれば、
- そもそも対象業務の選び方が合っていない
- プロンプトやテンプレが整っていない
といった運用面の見直しポイントが見えてきます。
まとめ:AIは“自分の1日の動き”に落とし込むと価値が見えてくる
2025年秋のCopilotアップデートを、生活者目線で整理すると:
- ニュース的な変化
- Agent Mode / Office Agent で、「段取りまで含めて任せられるエージェント化」
- Outlook・Teamsとの連携強化で、メール・会議の前後処理がどんどん自動化
- 個人向けMicrosoft 365にもCopilotが広がりつつある
- 生活の変化
- 朝の「メール山崩し」が短くなり、午前中に“考える仕事”に入れる
- 会議後の議事録作成・タスク整理の時間がまとめて短縮される
- 「今日も家で作業しないと…」という日が、少しずつ減っていく
AIニュースをそのまま追うだけだと、どうしても
「すごそうだけど、自分の生活とは別の話」
に見えがちです。
しかし、メールと会議だけに絞ってCopilotを試すところから始めれば、
- 時間のゆとり
- 頭の空き容量
- 「今日はここまでで終われそう」という軽い安心感
といった、“生活の手触り”レベルでの変化を感じられる可能性があります。


